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テスラ、車両電源を48V系に移行

ついにこの時が来ました。自動車の電力消費量は徐々に増え続け、48V系へ移行する瀬戸際に立っています。Vicorの電源モジュールがあれば、この移行はとても簡単に実現します。

Tesla Cybertruck image

テスラ サイバートラックは12Vの電気機器を止める

自動車の電気システムは、12V系から48V系にいずれ移行するであろうと20年前から言われてきました。しかし、コストの問題と変化への抵抗から、大電流アプリケーションで限定的に48Vが使われるほかは、12V系が使われ続けました。

しかし、テスラのハードウェア・エンジニアリングのバイスプレジデントである、ピート・バノン氏によれば、12Vを使わない自動車の時代はいよいよ目前です。「60年間続いてきたものを、我々は今まさに変えようとしています。それは12Vです」と、バノン氏はテスラの年次株主総会で述べました。

48V系に変更するには正当な理由があると、バノン氏は言います。「60年もの間、車内の電力需要は増加の一途を辿り、現在は200A以上の電流が車内を流れています。そのため太いワイヤーが必要であり、重量とコストが増大しているのです。」これは、自動車業界が48V系へシフトすると長年期待されてきたことの要因です。

「サイバートラック以降のすべてのプラットフォームで、テスラは48V系に移行します。」とバノン氏は発表しました。「この移行によって、必要な電流は4分の1に減ります。ハーネスの電力損失は抵抗×電流の2乗ですから、電流が4分の1に減少すれば、車内でエネルギーを分配する際の電力損失は16分の1になります。ワイヤーを細くでき、電子ヒューズとコントローラーを小さくできます。ヒートシンクの小型化も可能で、完全にヒートシンクが不要になる場合も多いでしょう。車両の小型化と軽量化に大いに役立ちます。」

これまで、48Vを使うアプリケーションは限定的でした。「48V系が使われ始めてからすでに数年が経っており、マイルドハイブリッド車のスターターオルタネーターやアクティブサスペンション、パワーステアリングなど、大電力のアクセサリーの電力供給で使われています。」ガイドハウス社のEVシニアリサーチアナリスト、マイク・オースティン氏は述べます。「テスラのプレゼンテーションで言われていたように、電圧を高くすることで、電流を減らしてワイヤーを細くすることが可能になり、重量とコストを削減できます。」


Future of LV Architecture chart

図1:低電圧配電アーキテクチャの未来(サイバートラック、オプティマス、そして未来の自動車 ― すべてが48Vに)。

単純なワイヤーハーネスは安価で取り付けも簡単ですが、48V系の部品はより高価であり、それが重要課題でした。「これまで48Vが普及しなかったのは、ほとんどがコストの問題です。48Vのバッテリーとコントローラーは、通常の12Vスターターとバッテリーよりも高価です。」

白熱電球のフィラメントが弱いことも、長年障壁のひとつでした。車両全体にはたくさんの電球があるので、12V系を排除するのは不可能に思えました。しかし、LED照明には、必要な低い電圧値に電圧を調整する回路が内蔵されているため、12V系と同じように48V系でも動作するはずです。そう語るのは、電源モジュールを専門に扱うVicor社のオートモーティブ・マーケティング部門ディレクター、グレッグ・グリーン氏です。

Managing power loss with a traditional converter at 94 percent efficiency image

図2:効率94%の従来のコンバータを用いる場合の電力損失

またEVでは、低電圧バッテリーを完全に取り除くことで、コストの問題にも対応できます。低電圧バッテリーの代わりに、駆動用バッテリーの高電圧を降圧するコンバータを搭載すれば、車載システムへの電力供給が可能です。「EVでは、駆動用バッテリーの電圧を変換するだけなので簡単です」とオースティン氏は話します。「テスラが車内のすべての低電圧機器に48Vを使えば、複雑さが解消でき、重量と原材料が抑えられるでしょう」。

これは、まさにVicorが推進している構想です。「12Vオルタネーターを中心に作られた内燃エンジン車は、48V系へ移行することは対価に見合う価値があります。EVでは、48V系への移行は自然な流れといえるでしょう。」

Systems moving from an overloaded 12V system to 48V image

図3: 12Vが過負荷となり48Vへ移行する負荷

ワイヤーハーネスの重量が減りサイズが小さくなるだけでなく、システムから電力供給されている機器側にもメリットがある、とグリーン氏は言います。「コンプレッサーやポンプは、12Vよりも48Vの方が効率よく動作しますから、一石二鳥です」。

バッテリー電圧の安定性を保ちながら、必要な電力供給ができるコンバータを開発することが、これまでの課題でした。Vicorはその課題を解決したと言います。「私たちは、高電圧のバッテリーを48Vに変換する、極めてコンパクトなDC-DCコンバータを開発するべく、お客様と力を合わせて取り組んできました。」と、グリーン氏は言います。Vicorは、レガシー12V機器に対応するための追加モジュールを展開しており、48Vから降圧して再び12Vにすることも可能です。

テスラの技術の実用化が近いと発表されても、すぐにそうなるとは限りません。サイバートラックがいつ量産され消費者の手元に届くのかは、まだ分かりません。

Global forecast by powertrain type image

図4:世界の自動車のパワートレイン別販売台数予測

しかしテスラの動向にかかわらず、他の自動車メーカーにも48V系車両の生産計画があるとグリーン氏は言います。Vicorのローンチカスタマーは、2023年か2024年初頭に発売される新モデルを、今年後半に発表します。2025年と2026年には顧客がさらに増えて12V系は今後10年間で徐々に減るでしょう。

「48Vは将来のテスラの低電圧系の姿であり、やがて自動車業界全体もあとにつづくでしょう。」とバノン氏は締めくくりました。

本記事は Design News. に掲載されたものです。

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